ひとり情シスとは?
課題や人材不足に悩む中小企業の対策などを紹介

情報システム部門を担う人材の不足がますます加速し、特に中小企業で状況が深刻化しています。会社に情報システム部門そのものが存在せず、別の業務と兼任で情報システム部門の役割を社員一人が担う、いわゆる「ひとり情シス」というケースが増加しています。今回は「ひとり情シス」の現状や課題、「ひとり情シス」問題を解決する方法について解説します。

今回のお悩み
社内に情報システム専任の部門がない。「ひとり情シス」という言葉をよく聞くが、自社にも当てはまるのだろうか。同じように部門がない他社は、どのような対応を行っているか、解決するにはどうすればよいのか知りたい。

私が解説します!
情報システム部門を担う人材は、日本全体で不足しています。中小企業などで増加している「ひとり情シス」の現状や、よくある課題などを解説するとともに、「ひとり情シス」問題を解決する方法も紹介します。自社の課題解決にぜひお役立てください。

( 1 ) 「ひとり情シス」とは

「ひとり情シス」とは、「ひとりが情報システムを担当している」状況を指します。中堅・中小企業では、ITリテラシーが比較的高い社員一人に情報システム担当を任せ、それが常態化してしまうケースが多く見られます。ここでは、ひとり情シスの役割や現状、加えてひとり情シスが増えている原因について解説します。

ひとり情シスの役割

情報システム担当の守備範囲は広く、社内のパソコンやサーバ、ネットワーク、業務システムなど多岐にわたります。近年のデジタル化やテレワークの推進により、情報セキュリティ対策の強化なども求められており、情報システム担当の果たす役割はますます大きくなっています。

〈ひとり情シスの主な業務〉

  • 社内ネットワークの構築・運用・管理
  • ハードウェアやソフトウェアの導入・運用・管理
  • 情報セキュリティ対策
  • ヘルプデスクなどのサポート業務
  • ITに関する戦略立案・実行

ひとり情シスの現状

ネットワークを通じて24時間365日サービスが提供されることが増え、情報システムも常に稼働していることが当然と考えられるようになってきました。近年では、クラウドサービスへの移行やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に取り組む企業が増えており、ITに関する最新動向への対応も求められています。社員一人がシステム管理や情報セキュリティ対策を担うことは、もはや限界を迎えつつあります。

専門的な知識を有する人材の確保はもともと難しいことに加え、会社自体の人手不足もあり、情報システムに優先的に人員を割けないという事情は、特に中小企業の慢性的な課題でもあります。また、一人もしくは少人数で業務を担当していると、負担がかかり過ぎている、今後の負担軽減が見込めないなどの不満の蓄積が、離職の原因となる場合もあります。
さらに、サイバー攻撃の件数が急増している中、情報セキュリティ対策は企業にとって重要な取り組みとなっており、これらを担う人材の確保や育成の重要性が高まっています。

ひとり情シスが増えている原因

ひとり情シスが増加している大きな原因は、専門知識を有する人材の不足や情報システムに関する理解の不足、クラウドサービスの普及の3点が挙げられます。

●専門知識を有する人材の不足

先にも触れたとおり、IT人材は日本全体で不足しています。総務省の「情報通信白書 令和5年版」では、デジタル化推進における課題として、日本企業の回答では「人材不足」が多く、41.7%を占めています。情報システム担当者には専門知識やスキルが必要とされる一方、優秀な人材の確保は困難な状況となっており、ひとり情シスの増加につながっています。

参照:総務省「令和5年版 情報通信白書 第2部 情報通信分野の現状と課題」

●情報システムに関する理解の不足

「情報システム業務は売上に直結しない」という企業の意識の低さや、重要性への理解不足もひとり情シス増加の原因の一つです。そのため、専任の部門や多くの人員は不要との認識が経営層に根強くあることは否めません。企業活動に欠かせない重要性を改めて認識することが必要です。

●クラウドサービスの普及

さまざまなクラウドサービスが登場し、それらを活用する企業も増えています。これまで自社で行っていたサーバの運用管理などが不要になるため、情シスの業務の一部が軽減されたように感じられ、人員を削減されるケースがあります。しかし、クラウドサービスの利用に伴う業務は増加するため、結果として情シスの業務負担は増加することになります。

( 2 ) ひとり情シスでよくある5つの課題

企業におけるひとり情シスの課題は、以下の5つと考えられます。

業務が属人化する

情報システムに関する業務を一人のみで行っていると、属人化するリスクが高くなります。トラブルが起きた場合に対応できる人材がいない、担当者が休んでしまうと業務がストップしてしまうなどの問題が生じます。

担当者の負担が増える

ひとり情シスを任された社員は、情報システムの業務すべてを行うことになります。当然、業務負担は増加し、一つの作業にかかる時間も長くなります。情シス以外の業務も兼任している場合は、手が回らず支障が出てしまうこともあるでしょう。

セキュリティリスクが増加する

ひとり情シスの業務負担が大きくなると、巧妙化するサイバー攻撃への情報セキュリティ対策が困難になり、リスクが高まります。マルウェア感染や不正アクセス情報漏洩などのインシデントが発生すると会社に多大な被害を及ぼすことになります。

緊急時の対応が遅くなる

常時、複数の業務を担う必要があるひとり情シスは、トラブルや災害などの緊急時に、迅速に対応できない可能性があります。対応する時間がかかるだけでなく、複数のトラブルの場合は小さなものは後回しになり、後に大きな事故を招くおそれもあります。

情シスの孤立化による退職のおそれがある

同じ業務を担当する人員がいないため、相談相手がおらず孤立してしまうリスクがあります。業務が立て込んでも協力は得られにくく、身体的にも精神的にも負担が大きくなります。体調不良による休職や、退職につながるケースもあります。

( 3 ) ひとり情シス問題の解決策5選

ひとり情シスにはさまざまな問題が生じます。これらを解決するための方法を5つ紹介します。

ひとり情シス問題の解決策5選

業務の範囲を明確化する

一人ですべての情シス業務を担当すると負担が大きくなるため、業務を主となる「コア業務」とそうではない「ノンコア業務」に分け、注力すべき業務を明確にすることが重要です。ノンコア業務を減らすことで、業務負担やストレスを軽減することができます。

他の社員で対応できるところはカバーする

先に挙げた「ノンコア業務」を他の社員が担当することで、ひとり情シスの負担を減らすだけでなく、属人化を防ぐことにもつながります。サポート業務などはマニュアルやFAQを作成し、誰でも対応できる体制を整えておきましょう。

社員のITリテラシー教育を実施する

社員全体のITリテラシーを向上することも重要です。ITリテラシーが低いとミスやトラブルの原因になることもあります。社員教育や研修などを実施し、ITリテラシーを高めることで、セキュリティ対策や業務効率化にも効果が期待できます。

新たな情シス担当を採用・育成する

できれば人員を増やすことが一番です。新たな人材を採用することはもちろん、社内で育成することも重要です。外部の研修などでスキルアップを促すほか、IT関連の資格取得を支援するなど、情シス業務へのハードルを下げる取り組みも有効です。

業務のアウトソーシングを検討する

人材の確保や育成に時間がかかるという場合は、アウトソーシングを検討しましょう。ひとり情シスでは対応しきれない業務を外部に委託することで、効率化が図れます。また、人材を採用・教育するよりもコストを抑えることができます。

( 4 ) まとめ

今回はひとり情シスについて、現状や課題、問題の解決策などを解説しました。ひとり情シスのままでは限界であり、解決するには情報システムやセキュリティを担う人材の確保や育成が重要になります。自社で解決できない場合は、アウトソーシングを検討することもおすすめします。

SAXA-DX Naviでは、DX時代に求められるセキュリティ人材の確保や育成方法をまとめた資料をはじめ、さまざまなお役立ち資料をご提供しています。ぜひ、ご活用ください。

経営課題におけるトレンド情報や課題解決にお役立ていただける資料をまとめております。
ぜひ一度お読みください。

お役立ち資料一覧はこちら