UTMはもう古い?
必要ないと言われる理由や導入すべき企業の特徴

不正アクセス情報漏洩など、さまざまなセキュリティリスクに備える対策として、UTMというツールは広く認知されています。その一方で、「もう古いのでは?」、「必要ないのでは?」といった声も聞かれるようです。そこで今回は、なぜ「古い」、「いらない」などと言われるのか理由を考察するとともに、どのような企業にUTMが必要なのかを解説していきます。「セキュリティ対策をしたいけれど、何を選択するのがよいのだろう」と考えている方は、ぜひ参考にしていただければと思います。

本記事では、UTMの背景や選定の考え方を詳細に解説しています。
短時間で要点を知りたい方は、こちらの資料もあわせてご覧ください。

導入メリットや選ばれる理由、実際の事例と効果をまとめた資料です。
UTMが自社に合うのか?」をすぐに知りたい方におすすめです。

この記事で得られること

  • UTMが「古い」と言われる理由と、実際に必要とされる企業やケースの理解
  • UTMが自社に本当に必要かどうかを判断する基準
  • UTMと最新セキュリティ対策との違いと、効果的な使い分け方

解説:
SAXA-DX Navi編集部

当サイト「SAXA-DX Navi」を運営するサクサ株式会社は、IPネットワーク技術をコアに、情報通信システムの機器開発・製造・販売を行うメーカーです。
UTM等のセキュリティ製品でも、中小企業のセキュリティ対策を支える国産メーカーとして高い支持を得ています。

( 1 ) UTMはもう古い?

結論から言えば、UTMは決して古いツールではありません。2025年現在も、中小企業を中心に有効なセキュリティ対策として活用されています。一方で、UTMという言葉をインターネットで検索すると、「必要ない」、「もう古い」などのワードが一緒に出てくることがあります。これは近年のセキュリティトレンドを考えて、「UTMではもう対応しきれないのでは?」と思っている人が増えてきているということが考えられます。また、「必要ない」、「もう古い」という声が出るのは、セキュリティ環境の変化や新しい技術の登場により適用領域が明確になった結果とも考えられるでしょう。

この記事を読んでいる方には【UTM丸わかりガイド】もおすすめです。基本機能や導入メリット、選び方をまとめた資料を無料でダウンロードできます。

( 2 ) UTMが「古い」「必要ない」と言われる主な理由

「UTM不要論」が生まれた背景

最も大きな背景は、企業のITシステム環境の変化です。クラウド化の急速な進展により、従来のオンプレミス(※1)中心の業務環境から、クラウドサービスを活用した働き方が一般的になりました。Microsoft 365、Google Workspace、Salesforceなどの普及により、社外のサービスへアクセスする機会が飛躍的に増加しています。

また、テレワーク・リモートワークの定着も見逃せません。新型コロナウイルスの影響で急速に広がったテレワークは、2025年現在も多くの企業で定着しており、従業員が社外から業務システムにアクセスすることが当たり前になっています。

こうした変化によって、社内と社外の境界が曖昧になり、従来の「境界内=安全」という前提が崩れつつあります。

その結果、ゼロトラストが注目されました。ゼロトラストは2010年にForrester ResearchのJohn Kindervag(ジョン・キンダーヴァグ)氏によって提唱された「何も信用しない」というセキュリティ概念です。

こうした新しいセキュリティモデルの登場により、「UTMのような境界防御では不十分では?」といった疑問が生まれました。このような背景から「必要ない」「もう古い」という検索ニーズが高まっていると考えられます。

※1 オンプレミス:企業が自社でサーバやソフトウェアなどのIT機器を保有・管理する運用形態

セキュリティ環境の変化

1.クラウドサービス利用の急増

従来のオンプレミス中心の業務環境から、AWS、Microsoft Azure、Google Cloudなどのクラウドプラットフォームを活用する企業が急増しています。データやアプリケーションがクラウド上に配置されることで、従来の境界防御の考え方では対応が困難になっています。

2.テレワーク・リモートワークの普及

2020年以降、テレワークが急速に普及し、従業員が自宅や外出先から業務を行うことが一般的になりました。これにより、社内ネットワークへの接続形態が多様化し、従来のネットワーク境界が曖昧になっています。

3.SaaS型ビジネスツールの一般化

Salesforce、Microsoft 365、Slack、Zoomなど、クラウド型のビジネスツールが業務の中核を担うようになっています。これらのサービスは社外に設置されており、従来のUTMによる境界防御では十分に保護できません。

4.社内と社外の境界が曖昧化

上記の変化により、明確に「社内」と「社外」を区分することが困難になっています。従業員はさまざまな場所、デバイスでサービスにアクセスするため、固定的な境界防御では対応しきれない状況が生まれています。

5.データの保管場所の変化

重要なデータがクラウドストレージに保管されることが増え、データへのアクセス経路も多様化しています。この変化により、ネットワークの出入り口のみを守るUTMの限界が顕在化してきました。

境界防御モデルの限界とゼロトラストの台頭

従来の境界型セキュリティの考え方は、「社内ネットワークは信頼できる安全な領域、社外ネットワークは信頼できない危険な領域」という前提にもとづいていました。この考え方により、ネットワークの境界にファイアウォールUTMを設置し、外部からの脅威をブロックすることがセキュリティ対策の中心でした。

しかし、「社内は安全、社外は危険」という前提が崩壊しつつあります。内部の従業員による情報漏洩BYOD(Bring Your Own Device)(※2)による管理外デバイスの接続、サプライチェーン攻撃による「信頼できる」取引先経由での侵入など、内部からの脅威も無視できなくなっています。

ここで、先述したゼロトラストが重要になります。ゼロトラストは、「信頼を前提としない」設計思想にもとづき、すべてのアクセスを都度検証する運用を基本としています。

※2 BYOD:従業員が私物のスマートフォンやPCを業務に利用すること

ゼロトラストが必要とされる背景には、以下のような要因があります。

  • クラウドファーストの業務環境への移行
  • リモートワークの常態化
  • IoTデバイスの増加による攻撃面の拡大
  • 内部脅威の増加
  • 巧妙化するサイバー攻撃手法

防御する側が進化すれば、攻撃を仕掛けてくる側も手口をどんどん巧妙化させており、従来の境界防御だけでは対応が困難なケースが増加しています。近年、被害が増加しているサイバー攻撃をいくつか挙げてみましょう。

ランサムウェア

マルウェアの一種で、パソコンに保存されているデータを暗号化するなどして、ランサム(Ransom=英語で「身代金」の意味)を要求するというものです。2025年現在も深刻な脅威です。メールやWebサイト、リモートデスクトップなど複数の侵入経路を持ち、一度感染すると迅速に拡散するため、境界防御だけでは防ぎきれません。

Emotet(エモテット)

メールを主な感染経路として侵入します。脅威が広まった後にいったんは収束するものの、再び活動が活発になる、ということを繰り返す油断のできないマルウェアです。正規のメールを装った巧妙な攻撃により、UTMのメールフィルタリングを突破する場合があります。

参照:IPA「Emotet(エモテット)の概要」

サプライチェーン攻撃

製品の原料・部品の調達から販売に至るまでの一連の流れを、サプライチェーンと言います。サプライチェーン攻撃とは、取引先の中小企業などを“踏み台”にしてターゲットの大手企業に侵入するサイバー攻撃のことです。正規のアクセス権限を悪用するため、境界防御では検知が困難です。

標的型攻撃

特定の組織や個人を狙った高度で持続的な攻撃(APT:Advanced Persistent Threat)は、長期間にわたって潜伏し、段階的に攻撃を進めるため、従来の検知手法では対応が困難です。

こうしたサイバー攻撃の複雑化・多様化こそが、「もはやUTMだけでは対応しきれないのではないか」と懸念される原因になっています。
そこには、UTMがオールインワンという大きな利便性を有する一方で、機能ごとにベンダーを選べないという特性を備えていることも関係しています。あくまで“一式セット”であるため、拡張など個別のカスタマイズ性が低いのです。

UTMでは対応しきれないケース

高負荷環境での性能限界

大量のトラフィックを処理する環境では、UTMの処理能力が限界となり、通信速度の低下やサービス停止を招く可能性があります。

多拠点分散環境での管理の複雑さ

国内外に多数の拠点を持つ企業では、各拠点にUTMを設置・管理することの運用負荷が課題となります。

細かいアクセス制御の必要性

部署やプロジェクト、役職に応じた細かなアクセス権限設定が必要な場合、UTM単体では不十分になりやすく、ID/アクセス制御やSASE/ゼロトラストとの併用が必要です。

クラウド環境への対応の難しさ

クラウド上のリソースへの直接アクセスや、クラウド間の通信を保護することは、オンプレミス設置型のUTMでは限界があります。

以上の状況から「UTMはもう古いのでは?」という不安が広がっていったと推察されます。しかし、これらはUTMそのものの価値が低下したという意味ではありません。そこで次に、UTMが本来どのような役割を持つのかを紹介します。

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( 3 ) そもそもUTMとは?機能と仕組みを整理

UTM(統合脅威管理)の基本構造とできること

UTM(Unified Threat Management:統合脅威管理)とは、複数のセキュリティ機能を1台に統合したセキュリティソリューションです。2000年代初頭にサイバー攻撃が巧妙化・多様化したことを受けて登場しました。従来は個別に導入していた複数のセキュリティ対策を一元化することで、効率的な多層防御を実現します。

詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめです。

UTMの主要な特徴と機能は以下の通りです。

特徴 内容
①多層防御を1台で実現 ファイアウォール、IPS/IDS、アンチウイルス、Webフィルタリングなどの多層防御を1台で実現する
②運用が簡単 セキュリティ専任者がいなくても運用しやすい簡便性
③管理・コストの効率化 複数のベンダーとの契約や管理を一本化できる運用効率
④高い防御力 サイバー攻撃不正アクセスから機密情報を守る高い防御力
⑤ネットワーク出入り口でのリスク制御 ネットワークの出入り口での脅威を検知・遮断する安全性

UTMの主要な機能は以下の通りです。

ファイアウォール(境界防御)

ネットワークの出入り口に設置し、不正アクセスを遮断する基本的なセキュリティ機能です。社内ネットワークと外部ネットワーク間の通信を監視し、事前に設定されたルールにもとづいて通信の許可・拒否を決定します。

IPS/IDS(不正侵入防御/検知システム)

IPS(Intrusion Prevention System)は日本語で「不正侵入防御システム」。不正アクセスや異常な通信をリアルタイムで通知したうえでブロックします。IDS(Intrusion Detection System)は日本語で「不正侵入検知システム」。不正アクセスや異常な通信の通知のみを行います。これらにより、ファイアウォールをすり抜けた脅威にも対応できます。

アンチウイルス/アンチマルウェア(※3)

ウイルス、ワーム、トロイの木馬などのマルウェアを検知・除去する機能です。定期的に更新されるウイルス定義ファイルにより、最新の脅威にも対応します。ランサムウェアなどの巧妙な攻撃からもシステムを保護します。

Webフィルタリング(有害サイトのブロック)

従業員が業務に不適切なサイトや、マルウェアの感染源となる有害サイトへアクセスすることを防止する機能です。カテゴリ別のフィルタリングにより、生産性向上とセキュリティ強化の両方を実現します。

アンチスパム

スパムメールや迷惑メール、フィッシングメールをブロックする機能です。メールを介した攻撃やマルウェア感染を防止します。

VPN機能(※4)

リモートワーク時の安全な接続を提供する機能です。暗号化された通信により、社外からでも安全に社内ネットワークにアクセスできます。

このように、UTMはオールインワンで搭載されているため、ネットワークの出入り口で包括的な監視・遮断を行い、内部・外部の両方向からの脅威に対して、より強固なセキュリティ対策ができるという利点を備えています。

※3 マルウェア:ウイルス、スパイウェアなど、不正な動作を行う悪意あるプログラムの総称。 ※4 VPN機能:VPN(Virtual Private Network)は「仮想の専用線」の意味。VPN機能とは、インターネットをはじめとするネットワーク上に仮想的な専用ネットワークを構築して行う通信のこと。

UTMのメリット・デメリットとは?

UTMは複合セキュリティなので包括的に防御ができますが、メリットとデメリットの両面があります。導入を検討する際は、これらを十分に理解することが重要です。

メリット

  • オールインワンで一元管理が可能

    複数のセキュリティ機能を単一の管理画面で操作できるため、運用効率が大幅に向上します。

  • コストパフォーマンスが高い

    個別にセキュリティ製品を導入するよりも、総合的なコストを抑制できます。

  • セキュリティ専任者がいなくても運用可能

    直感的な管理画面と自動化機能により、専門知識が少なくても運用できます。

  • 導入がスムーズ

    アプライアンス型のため、複雑な設定作業が少なく、短期間での導入が可能です。

  • アプライアンス型で安定性が高い

    専用ハードウェアにより、安定した性能と信頼性を確保できます。

デメリット

  • 機能ごとにベンダーを選べない

    すべての機能が同一ベンダーの製品となるため、特定機能のみ他社製品を使用することができません。

  • カスタマイズ性が低い

    オールインワン製品の特性上、個別のニーズに合わせた細かな調整が困難な場合があります。

  • 通信速度への影響の可能性

    複数の機能による検査処理により、通信速度が低下する場合があります。

  • 多拠点分散環境では限界も

    拠点数が多い場合や、複雑なネットワーク構成では管理が困難になる可能性があります。

UTMは多層防御を手軽に実現できる有効な手段ですが、それだけで万全とはいえません。中小企業としてまず整えるべきセキュリティ対策の全体像は、以下の資料で詳しく解説しています。

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( 4 ) UTMと新しいセキュリティ対策(SASE・ゼロトラスト)との違い

SASE/ゼロトラストの基本概要

SASE(Secure Access Service Edge)とは、ネットワークサービスとセキュリティサービスをクラウド上で統合して提供するアーキテクチャです。従来のオンプレミス型セキュリティ機器ではなく、クラウドサービスとして提供されることで、場所やデバイスを問わない柔軟なセキュリティを実現します。 ゼロトラストアーキテクチャの原則は「何も信用しない」「すべてを検証する」という考え方です。ネットワークの場所に関係なく、すべてのアクセス要求に対して厳密な認証・認可・暗号化を実施します。

クラウドネイティブなセキュリティモデルとして、これらの新しいアプローチは、従来の境界防御型セキュリティとは根本的に異なる考え方にもとづいています。

これらの新しい考え方を正しく理解するには、ゼロトラストの基本的な仕組みを押さえておくことが大切です。

下記の資料では、ゼロトラストの基礎をわかりやすく整理しています。

UTM、SASE、ゼロトラストは仕組みや適用範囲には明確な違いがあります。
以下の表は、それぞれの主な特徴と導入の目安の比較になります。

項目 UTM SASE ゼロトラスト
配置場所 オンプレミス(境界) クラウド 分散配置
防御対象 ネットワーク境界 すべてのアクセス すべてのアクセス
向いている組織 中小企業 中堅~大企業 大企業・複雑な組織
コスト 低~中 中~高
専任者要否 不要 推奨 必要
導入期間 短期 中期 長期
拡張性

UTMとの補完・使い分けのポイント

UTMとゼロトラストは対立関係ではないことを理解することが重要です。どちらも有効なセキュリティアプローチであり、組織の状況に応じて選択または併用することが可能です。

組織規模による使い分け

  • 小規模企業(~100名程度):UTM単体で十分
  • 中堅企業(100~1000名):UTM+部分的なゼロトラスト
  • 大企業(1000名~):ゼロトラスト中心+必要に応じてUTM

ハイブリッド環境での併用

オンプレミスとクラウドを併用する環境では、オンプレミス部分はUTMで、クラウド部分はSASEやゼロトラストで保護するという使い分けが有効です。

段階的な移行戦略

いきなりゼロトラストに移行するのではなく、まずUTMで基本的なセキュリティを確立し、段階的により高度なセキュリティモデルに移行する戦略も有効です。
ある大学では、コロナ禍でリモート接続が必要になったため、職員・教員・学生が外部から接続する際に、身分や階級、学部やクラスごとにアクセス権限を細かく分ける必要が生じました。しかも大学の管理外にあるさまざまな端末でアクセスされるため、その制御をする必要が出てきました。これを既設のUTMで行おうとしたところ対応が困難なことが判明し、複雑な組織内のネットワークに合わせて数種類のサービスを組み合わせるゼロトラストネットワークを構築することになりました。

クラウド型UTM・マネージドUTMという選択肢

クラウド型UTMとは、従来のオンプレミス型UTMの機能をクラウドサービスとして提供するソリューションです。初期投資が少なく、拡張性が高く、常に最新の機能を利用できるメリットがあります。
マネージドUTMUTMの運用をベンダーに委託するサービスにより、24時間365日の監視、定期的なメンテナンス、セキュリティアップデートなどを専門家に任せることができます。
これにより、ハードウェアの保守・ソフトウェアのアップデート・ログの監視などの内部の運用負荷を軽減することができます。

クラウド型UTM、マネージドUTMを利用することで、事業成長に応じてサービスレベルを柔軟に変更でき、固定費ではなく変動費として管理できるため、成長企業にとって魅力的な選択肢の一つとなります。

( 5 ) UTMが有効な企業やケースとは?

ここまでで、UTMが「古い」技術ではないと理解できたと思います。2025年現在もUTMは現役のセキュリティソリューションとして、特に中小企業において重要な役割を果たしています。中小企業の多くは、大企業のような潤沢な予算や専門的なセキュリティ人材を確保することが困難です。セキュリティ対策に膨大なコストも手間もかけられない、あるいはゼロトラストネットワークを構築するまでもない、そんな企業にとってUTMは依然としてベストな選択です。

ここからは、UTMの必要性が高い企業を見ていきましょう。

UTMが向いている企業の特徴

機密情報や顧客情報を取り扱う企業

どんな企業でも情報は大きな資産です。特に重要な機密情報や顧客情報を取り扱っている企業にはUTMが有効です。万が一情報漏洩が起きてしまうと、会社としての信頼を失ってしまうだけでなく、賠償責任を問われるなど大きな損害が生じてしまう恐れがあるため、外部・内部からの脅威に対応できるUTMは大いに役立ちます。

小規模事業者や中小企業

比較的小規模な組織には、UTMの導入がおすすめです。あらゆる脅威に個別にセキュリティ対策を行うとなると、手間もコストも膨大にかかりますが、UTMは1台に複数の機能を備えているためコストをかけずに導入でき、一元管理ができるので手間もかかりません。

セキュリティの専門部署や専任者がいない企業

UTMは社内外のさまざまなセキュリティリスクから会社を守ってくれます。ウイルス定義ファイル(パターンファイル)を定期的に更新し、最新のセキュアなネットワーク環境にしてくれるので、専任の担当者がいなくても安心です。UTMによってはサイバー保険(※5)が標準で付いているものもあります。

今すぐセキュリティを強化したい企業

早急にサイバーセキュリティ対策を講じたいという企業には、導入がスムーズなUTMが向いています。またUTMはトラブル発生時も迅速に対応することができます。個々にセキュリティ対策をしていると、何かトラブルが起きたときそれぞれのベンダーに連絡しなければなりませんが、UTMなら1つのベンダーに連絡するだけで済みます。

拠点数が少ない(1~数拠点程度)企業

単一拠点または少数拠点での業務が中心の企業では、各拠点にUTMを設置することで効果的なセキュリティ対策を実現できます。拠点間VPN接続により、安全な拠点間通信も確保できます。

予算が限られている企業

複数のセキュリティ製品を個別に導入・運用するよりも、UTMは大幅なコスト削減を実現できます。初期導入費用、ライセンス費用、保守費用の総合的な最適化が可能です。

シンプルな運用を求める企業

複雑なセキュリティ運用を避け、シンプルで確実な防御を重視する企業にとって、UTMの一元管理は大きなメリットです。

オンプレミス中心の業務環境

クラウド化が進んでいない、または意図的にオンプレミス環境を維持している企業では、UTMによる境界防御が依然として有効です。

本記事で取り上げているUTMの概要を知りたい方は、 【5分でわかるサクサUTM】 もご覧ください。主要な機能やサポート体制をコンパクトにまとめています。

※5 サイバー保険:サイバー事故によって生じた損害賠償責任、事故対応にかかる費用、喪失した利益などを補償する保険のこと。

実際の導入事例

製造業、医療機関、士業事務所など、重要な機密情報や個人情報を扱う企業では、情報漏洩防止が最重要課題です。UTMの包括的な防御機能により、外部からの不正アクセス、内部からの情報持ち出し、マルウェア感染による情報流出を防止できます。

(1)医療機関

<背景>

個人情報を扱う一方で専任者不在。メール経由のマルウェア不正アクセスに不安。

<対策>

院内境界にUTMを設置し、FW/IPS/URL/AVを一元管理。リモート保守と月次レポートを追加。

<効果>

・フィッシング由来の不審通信を初月から可視化・遮断

・端末別/カテゴリ別の脅威件数を月次で見える化

・問合せ窓口の一本化で現場負担を軽減

参考:厚生労働省【医療分野のサイバーセキュリティ対策について】

(2)製造業

<背景>

拠点ごとに異なるルータ/FW構成で、設定のばらつきや運用コストが問題。また、クラウド活用の増加で、回線負荷も高まっていた状況。

<対策>

全拠点の入口にUTM(またはNGFW)を標準配備し、ポリシーをテンプレート化。将来的なSD-WANやSASE移行を見据え、段階導入のロードマップの作成。

<効果>

・全拠点で同一ポリシーに統一でき、監査・保守の負荷が削減

・クラウド直収設計で遅延が改善し、業務アプリの体感速度が向上

参考:IPA【中小企業における情報セキュリティ対策の実態調査-事例集】

(3)建設・住宅

<背景>

顧客情報や設計図面の外部流出リスクが懸念。各PCに個別の対策は入っているものの、境界での統制が弱く、Web由来のリスクが残っている状況。

<対策>

国産UTMを導入し、WebフィルタリングとIPSの強化。サポートでリモート駆け付けとウイルス駆除支援付きの保守を利用。

<効果>

・設計データの外部持ち出し経路を制御でき、マルウェア通信や不正サイトへのアクセスが大幅に減少

・障害時はベンダー一括対応となり、復旧時間が短縮

参考:IPA【中小企業における情報セキュリティ対策の実態調査-事例集】
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( 6 ) UTM導入の判断基準と選び方【チェックリストつき】

自社の状況から判断する5つのチェックポイント

どのようなことに気をつけてUTMを選べばよいか、ポイントを紹介します。UTM導入の際、比較検討の参考にしてください。チェックが多いほど、UTMの導入が効果的な可能性があります。

1.拠点数(単一拠点か、複数拠点か)

  • 単一拠点または少数拠点(3拠点以下)
  • 各拠点の規模が中小規模
  • 拠点間の通信要件がシンプル

2.社外アクセス比率(テレワーク率など)

  • テレワーク率が50%未満
  • 社外アクセスのセキュリティ要件が明確
  • VPN接続で十分対応可能

3.SaaS利用率(クラウドサービス依存度)

  • 基幹システムの多くがオンプレミス
  • クラウドサービス利用は補助的
  • データの多くが社内に保管

4.セキュリティ専任者の有無

  • セキュリティ専任者がいない
  • IT担当者が兼任
  • シンプルな運用を重視

5.セキュリティ対策予算

  • 初期投資を抑制したい
  • 運用コストの予測可能性を重視
  • 複数製品の個別管理は避けたい

ベンダー選定のポイント

自社の環境に合っているか

UTMの導入に際しては、自社に必要な機能がすべてそろっているかを確認しておきましょう。不正アクセスやウイルス侵入など外部のリスクだけでなく、内部機器からの情報漏洩、ウイルス拡散などのリスクにも備えられるか、といったこともチェックをすべきです。
またUTMの中には簡単に拠点間VPN接続ができるものがあります。VPNは暗号化などさまざまなセキュリティ対策が施されているため、一定のセキュリティが確保でき、リモートワークに対応しやすいなどのメリットがあります。

操作がしやすいか

機能や操作性のわかりやすさも重要なポイントです。「UTMは不要」という意見の中には、導入したものの使いこなせていないケースもあるようです。そんな無用の長物にしないためにも、使いやすいものを選びましょう。
UTMによってはブロックした脅威がわかるように、セキュリティ状況を確認でき、視覚的に把握できるものもあります。こうした機能は、従業員のセキュリティ意識向上にも役立ちます。

導入・運用コストは手ごろか

比較的低コストで導入・運用ができるのは、セキュリティ対策に費用をかけられない企業にとってはうれしいポイントです。しかし安さだけで選んでしまうと、「海外製品だから管理画面が英語でわからない」、「速度が遅くてストレスになるので結局使っていない」といったケースもあります。コストパフォーマンスを考慮しながら、適切なものを選ぶことが重要です。

耐久性はあるか

UTMはオールインワン製品なので、ひとたび問題が起きるとセキュリティが非常に脆弱になる可能性があります。またインターネットそのものが当面使えなくなる事態も考えられます。ベンダーの実績も参考にしながら、耐久性に優れた製品を選びましょう。

サポート体制が整っているか

サポート体制も事前に確認しておくことが必要です。わからないことや困ったことがあった際に迅速に対応してくれるか、リモート保守サポートやPCの感染時に無料のウイルス駆除サービスがあるか、などをチェックし、きめ細かな配慮が行き届いているベンダーを選びましょう。

通信速度への影響はあるか

UTMを導入することで通信速度が大幅に低下しては本末転倒です。スループット性能、レイテンシ、同時接続数などの技術仕様を確認し、自社の利用環境で十分な性能が得られるかを検証しましょう。

実績・信頼性はあるか

導入実績、業界での評価、財務安定性、技術力などを総合的に評価します。長期間安心して利用できるベンダーを選択することが重要です。

国産メーカーか海外メーカーか

日本国内での法規制対応、日本語サポートの充実度、国内のサポート拠点の有無などを考慮し、自社のニーズに適した選択をします。
これらのポイントを参考に、自社に合ったUTMを導入することでサイバー攻撃情報漏洩から会社を守りましょう。適切な対策を講じ、自社を守ることでブランド力の向上、業績のアップにつながります。

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( 7 ) よくある質問

Q1.UTMとNGFW(次世代ファイアウォール)はどう違いますか?

A. 目的と適用範囲が異なります。UTMは「多機能統合型」、NGFWは「高度な制御特化型」の製品です。

  • UTM(統合脅威管理):ファイアウォール、IPS/IDS、アンチウイルス、Webフィルタリング、アンチスパムなどを一台で管理できるオールインワン型。中小企業向き。
  • NGFW(次世代ファイアウォール):アプリケーションやユーザー単位での通信制御が可能。大規模ネットワークや詳細制御が必要な環境に適しています。
  • 選び方の目安:運用の簡便さを重視するならUTM、柔軟な制御や拡張性を求めるならNGFWが有効です。

Q2.UTMだけでは不十分な場合はどうすればいいですか?

A. UTMを基盤に、他のセキュリティソリューションを段階的に追加するのが効果的です。
UTMで境界防御を確立しつつ、以下のような併用が現実的です。

  • エンドポイントセキュリティ(EDR、アンチウイルス):端末感染の防止
  • クラウドセキュリティサービス:SaaSやクラウド利用を保護
  • ゼロトラスト/SASEモデル:多拠点・リモートワーク環境の強化

Q3.クラウド型UTMの利点と注意点は?

A. クラウド型UTMは「導入のしやすさと常時最新状態」が強みですが、「回線依存性」に注意が必要です。

メリット

  • 初期投資が少なく、短期間で導入可能
  • アップデート・保守をベンダー側で実施(常に最新状態)
  • 拡張性が高く、拠点追加にも柔軟に対応

デメリット

  • インターネット接続が必須(回線障害時は影響を受ける)
  • 月額費用(ランニングコスト)の把握が重要
  • 回線冗長化やバックアップルートを準備すると安心です。

Q4.UTMの更新時期はどう判断すればいいですか?

A. 一般的には導入から5〜7年が更新の目安です。サポート終了や性能不足が見えた段階で早めの更新を検討しましょう。

更新判断の主な基準

  • メーカーのサポート期間終了
  • 通信速度の低下・処理性能の限界
  • 新しい脅威・攻撃手法への非対応
  • ハードウェア障害の増加
  • 運用コストの上昇(保守更新費の高騰)

Q5.中小企業にUTMは本当に必要ですか?

A. 中小企業こそUTMが最も効果を発揮します。セキュリティ担当者がいない企業でも、一台で包括的な防御が可能です。

中小企業に向いている理由

  • 不正アクセスマルウェア感染、情報漏洩を一元的に防御
  • 専門知識がなくても管理が容易
  • 個別製品を複数導入するよりもコスト効率が高い
  • 取引先・顧客からのセキュリティ要件にも対応できる
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( 8 ) まとめ

ここまで、「UTMはもう古い?」、「UTMはもう必要ない?」と言われる理由を検証するとともに、導入すべき企業の特徴などを解説してきました。
決して機能的に古いから「いらない」と言われているわけではないことがご理解いただけたのではないかと思います。単に「古い」や「不要」といった言葉に惑わされず、適切に判断することが必要です。
UTMは「古い技術」なのではなく、「役割が変わった」「適用領域が明確になった」と捉えるべきです。

UTMをどう位置づけるかがセキュリティ強化の鍵

実際、中小企業では、複数のソフトやツールを組み合わせて多層防御を行うのは現実的ではありません。その点、UTMは1台にさまざまな機能をオールインワンで搭載し、一元管理を行うことができます。
重要なのは、UTMを「時代遅れの技術」として切り捨てるのではなく、自社の規模・環境・予算・人材に応じて適切にセキュリティソリューションを選択・組み合わせることです。UTMが最適な組織もあれば、ゼロトラストが必要な組織もあり、両者を併用することが効果的な場合もあります。高いセキュリティと低コストを実現したい企業のみなさまには、UTMの導入をおすすめします。

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