業務の生産性向上に必要なポイントとは?
従業員のストレスと生産性の関係を解説

すべての企業活動にとって、業務の生産性を高めることは永遠のテーマです。その取り組みのひとつとして、従業員のストレスマネジメントが注目されています。近年、テレワークなど新しい働き方の普及によって、従業員がどのようなストレスを抱えているのか把握しにくい状況が生じているという背景も、そこにはあるようです。
まさに「不透明」な状況の中で、従業員のストレスを軽減するためにはどうすればよいのか。そもそも従業員のストレスと生産性の向上には、どのような関係があるのか。今回はそうした視点から、ポイントや改善策について解説していきます。

( 1 ) 生産性を高める「ウェルビーイング」

ウェルビーイングという言葉をご存じでしょうか? 日本語では「幸福」や「健康」と訳されることもありますが、その定義としてよく引用される世界保健機関(WHO)憲章の前文では、以下のように書かれています。

Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity. 健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。 (日本WHO協会仮訳)

出典:世界保健機関(WHO)憲章とは | 公益社団法人 日本WHO協会

つまり、ウェルビーイングとは、あらゆる意味でその人にとって「よい状態」にあることを指しています。そこで、従業員のウェルビーイングが企業の生産性を高めるのではないか、ということが注目されています。海外の大学や研究機関の調査では、

  • 健康的な食生活や運動が仕事のパフォーマンス性を高める
  • 幸福度が高いと自己評価した労働者は生産性が高い
  • 気分の落ち込みを放置すると生産性が低下するおそれがある
    (正しい対処を行うことで仕事のパフォーマンスが改善した)

といった結果や指摘も報告されています。このことからも、身体的・精神的どちらも満たされていることがいかに大切であるかがわかります。逆にいえば、ストレスや心の問題を放置すると、企業の生産性の低下を招くことになりかねないのです。

( 2 ) 多くの労働者がストレスを抱えている

それでは、働く人のストレスはどのような状況になっているのでしょうか。厚生労働省によって、令和2年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況が発表されました。この調査は、事業所が行っている安全衛生管理・労働災害防止活動およびそこで働く労働者の仕事や職業生活における不安やストレスなどの実態について把握し、今後の労働安全衛生行政を推進するための基礎資料にすることを目的として実施されています。
その結果を見ると、現在の仕事や職業生活に関することで強い不安やストレスになっていると感じる事柄がある労働者の割合は、54.2%にのぼります。このことからも、労働者の半数以上が何らかのストレスを抱えていることがわかります。従業員一人ひとりが最大限のパフォーマンスを発揮するためには、ストレスを軽減する取り組みが必要不可欠であることを示す、見過ごせないデータといえるでしょう。

出典:00_令和2年労働安全衛生調査(実態調査)_概況表紙

( 3 ) 何がストレスの原因になっているのか?

先ほどの厚生労働省の調査を、もう少し詳しく見てみましょう。何がストレスの原因になっているのかを、パーセンテージの高い順に挙げてみます。

  • 仕事の量(42.5%)
  • 仕事の失敗、責任の発生等(35.0%)
  • 仕事の質(30.9%)
  • 対人関係(セクハラ・パワハラを含む)(27.0%)
  • 会社の将来性(20.9%)
  • 顧客、取引先等からのクレーム(18.9%)
  • 役割・地位の変化等(昇進、昇格、配置転換等)(17.7%)
  • 雇用の安定性(15.0%)
  • その他(11.5%)
  • 事故や災害の体験(2.7%)

「仕事の量」がストレスの原因第1位

多くの労働者がストレスだと感じていることの第1位は、「仕事の量」です。つまり、仕事量とストレスの大きさは比例しているのです。仕事が多ければ勤務時間も長くなり、それだけ緊張状態からも解放されないということになります。
長い勤務時間はプライベートな時間を奪い、リフレッシュする(ストレス発散のために趣味に打ち込んだり、旅行を楽しんだりする)ことも難しくなります。当然、ワークライフバランス(※1)にも悪い影響をもたらします。家庭を持っている従業員で、子育てにも手がかかるというような場合、その両立はとても大変でしょう。

何がストレスの原因になっているのか?

人間関係も大きなストレッサーに

もうひとつ注目したいのが、「対人関係」が4位に挙がっていることです。人間関係にもさまざまなカタチがありますが、特にストレスに大きな影響力を及ぼすのは上司との関係ではないでしょうか。

  • 上司が強権的で逆らえない
  • 言うことがコロコロ変わって翻弄される
  • 仕事のミスに対する嫌味や皮肉が絶えない

など、「上司への不満あるある」をいくつか挙げてみると、思い当たる節があるという方も多いと思います。日本にはいまだにタテ社会の風潮も残っているため、上司の命令は絶対というような古い体質の会社もあるかもしれません。「これじゃ健全なコミュニケーションがとれないよ」と、ついつい愚痴りたくもなるでしょう。
近年はこれに加えて、セクハラやパワハラ、さらにモラハラ(※2)といった問題も顕在化しています。こうして多くの従業員が、実にさまざまなストレスにさらされているのです。

※1 仕事と生活の調和。誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、個人の時間も持てる、健康で豊かなバランスのとれた状態のこと。
※2 モラルハラスメントの略。物理的な暴力ではなく、精神的な攻撃を指す。倫理・道徳に反したいやがらせ。

( 4 ) ストレス対策のための3つのポイント

ストレスの負荷が大きいと、従業員のパフォーマンスは思うように上がりません。限られた人的資源を生かして、生産性を向上させるためには、企業はどのようなことに取り組めばよいのでしょうか。3つのポイントから、従業員のストレスを軽減する方法を見ていきます。

ポイント①【ワークライフバランス】

企業としてワークライフバランスを推進することは、ストレス対策と表裏一体と考えてよいでしょう。具体的にいえば、テレワークやフレックス制の導入など、従業員がそれぞれに柔軟な働き方ができる施策を取り入れることで、仕事と生活の両立を図りやすくする環境を整えていきます。こうしてストレスが軽減され、社員の満足度がアップすれば、高いパフォーマンスが発揮されて、生産性の向上が期待できます。
また、今後、少子高齢化がさらに進み、働き手不足が深刻化することを考えれば、遅かれ早かれこうした取り組みは避けて通ることができません。むしろ、「わが社はワークライフバランスの推進に力を入れていますよ」ということを積極的にアピールすることで、優秀な人材も確保することができるはずです。

ポイント②【業務の効率化】

新型コロナウイルスの感染症拡大によって、好むと好まざるとにかかわらず企業のデジタル化は急速に進みました。多くの企業が、ビデオ会議システム、ビジネスチャット(※3)など、さまざまなITツールを活用するようになり、どうすれば業務を効率化できるかを真剣に考えるようになりました。
つまり、便利なツールの導入は、ストレッサーである「仕事の量」を減らすことにつながり更に同じ時間を使って効率的に働けるため、生産性は高まっていきます。

ポイント③【メンタルヘルスケア】

3つ目にして最大のポイントが、従業員のメンタルヘルスケアです。優良企業であるほど、ここに大きく力を入れているといってもよいでしょう。
ストレスは日々、蓄積されていきます。業務に追われたり、相談できる相手もいなかったりすると、それは発散されることなく「塵も積もれば」式に溜まり、いつか病気や事故など取り返しのつかない結果となってドッと表面化するケースもあります。そうならないためにも、日ごろから面談やアンケートを実施する、社内カウンセリングを行う、必要に応じて産業医や保健師などの専門家に相談する、などのメンタルヘルスケアが必要です。
さらに、その結果やデータを基にして職場環境の改善に取り組み、風通しのよい人間関係の構築やコミュニケーションができる工夫などにも生かしていくことが求められます。

※3 業務での利用を目的として開発されたコミュニケーションツール。社内外の人と効率的にやりとりができる。

( 5 ) ニューノーマル時代のストレスチェック方法

ウェルビーイングおよびストレス対策の重要性はよくご理解いただけたと思います。と、ここで「最近はテレワーク中心で、あまり会社に行っていないから、そんなにストレスも溜まっていないのでは?」という経営者の声も聞こえてきそうです。しかし、それは大きな誤りです。むしろテレワークになったことで、新たな問題が浮き彫りにされてきたといってもよいでしょう。
ストレス対策の取り組みとして、労働者のストレスチェックがあげられますが、面談や社内カウンセリングをやりたくても、そもそも会社で会う機会がない。リモートで話を聞いても、本当のところが見えてこない。こうして個々のストレス状況が把握しにくくなっているというのが、ニューノーマル時代の課題といえます。
さらに、テレワークにはテレワークならではのストレスも存在します。通勤時間がかからない、業務の効率化を図ることができる、時間の融通が利きやすいなど、テレワークにはさまざまなメリットがある一方で、

ニューノーマル時代のストレスチェック方法
  • プライベートとの区別がつかない
  • 誰とも顔を会わさず孤独だ
  • 正当に評価されるか不安

など、メンタル面に及ぼすデメリットもいろいろ指摘されています。こうしたニューノーマル時代のストレスにどう対応すればよいのか、企業としては真剣に考える必要があります。

ストレス対策の一つ、在宅でもできるメンタルヘルスケアを

最近は、インターネットを活用して従業員の心の健康状態を把握することができる、さまざまなメンタルヘルスケアサービスが登場しています。これらを活用することで、従業員はテレワークにおいても(在宅、カフェなど、場所を選ばず)ストレスチェックを行うことができます。
例えば、スマートフォンやセンサー付きマウスを使って脈波を測定。それを可視化することでセルフケアを可能にするなど、便利な機能が備わったものもあります。さらに、本人だけでなく上司などにも情報を共有できる機能があれば、本人と直接会わなくても(面談などを行わなくても)ストレスマネジメントができます。
個々の従業員に対して適切なマネジメントを行い、従業員のストレスがスムーズに軽減されれば、生産性の低下と損失を防ぐことになります。生産性が向上することで、企業には強い競争力がもたらされます。そのためにもメンタルヘルスケアサービス(ストレスチェックツール)は、ニューノーマル時代の働き方に欠かせないものといえそうです。

( 6 ) まとめ

ここまで、従業員のストレスマネジメントが、いかに企業の生産性を左右するかについて解説してきました。経営者にとっての脅威は、競合他社や、ネットワークの向こうからやってくるサイバー攻撃だけではありません。内部に潜む従業員のストレスも一種のリスクととらえ、真摯に向き合っていくことが大切です。
国連が定めるSDGs(持続可能な開発目標)の3つ目には、「すべての人に健康と福祉を」という項目が設けられています。従業員のストレス管理、メンタルヘルスケア、そしてウェルビーイングについて考えることは、まさにここにかかわってきます。そうやって企業も従業員もその家族も、みんなが幸せになっていくことが大事なのです。
サクサでは、従業員の心の健康管理を行うメンタルヘルスケアサービス「cocoem.(ココエム)」を提供することで、ニューノーマルな働き方における企業のメンタルヘルス対策をサポートさせていただきます。ぜひ、お気軽にご相談ください。

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