情報資産とは?
具体例や管理の重要性・漏洩リスクを徹底解説

急速に進むデジタル化に伴い、情報資産を管理する重要性が増しています。情報資産を適切に管理するためには、情報資産とは何かを理解し、それを保護することが重要であるという高いセキュリティ意識が必要です。大多数の企業が情報セキュリティ対策を実施しているにもかかわらず、現実には情報資産が漏洩するケースは後を絶ちません。この記事では、情報資産の具体例とともに、なぜ管理が必要なのか、漏洩リスクなどを詳しく解説します。ぜひ、自社で情報資産を管理する際の参考にしてください。

今回のお悩み
情報資産とは、何を指すのだろうか? どのような種類があるのか、情報資産の具体例や、なぜ管理する必要があるのか、漏洩するとどのようなリスクがあるのかを詳しく知りたい。

私が解説します!
情報資産について理解を深めることで、管理しなければならない理由が見えてきます。情報資産が漏洩する原因や、情報資産の管理で押さえるべきポイントも紹介します。

( 1 ) 情報資産とは?

情報資産とは、企業や組織、または個人が保有する重要な情報のことです。従来、情報は紙ベースで管理されてきましたが、近年はIT、IoT、AI(人工知能)、ビッグデータなど技術革新が進むにつれ、以下のツールや記憶媒体などにデジタルデータとして保有されることが増えてきました。

  • パソコン、サーバ
  • CD-ROM、USBメモリなど記録媒体
  • オンラインストレージ

情報資産の具体例

資産として価値がある情報とは何か、企業と個人に分けて具体例を紹介します。

企業編

情報は今やビジネスにおいて、「ヒト」「モノ」「カネ」に次ぐ、第4の重要な経営資源とされています。企業は実に多くの情報資産を持っています。慎重に取り扱わなければならない個人情報をはじめ、事業の根幹や今後の意思決定にもかかわる情報、企業としての優位性を維持するためにも守るべき情報など、さまざまなものがあります。

  • 従業員情報
  • 顧客情報
  • 財務情報
  • 資金調達や予算に関するデータ
  • 契約情報
  • 業務マニュアル
  • 製品・サービス・技術に関する情報
  • 会議の議事録
  • 電子メールやビジネスチャットの内容 など

個人編

情報資産は個人でも保有しています。自分自身に関する情報や他人の連絡先など、すべて情報資産と捉えることができます。その多くは個人所有のパソコンやタブレット、スマートフォンなどに保存されています。最近ではそれらがビジネスで使われることも多く、問題を複雑化させています。

  • ネットショッピングの購入履歴
  • クレジットカードの明細情報
  • スマートフォン内の写真データ
  • 友人・知人の電話番号やメールアドレス
  • SNSのアカウント情報 など

情報資産の分類

情報資産の分類方法は、企業や組織によって異なります。主な分類方法を3点紹介します。

一般的な分類

多くの企業では、重要度によって区分する方法が採られています。一般に公開されている情報は重要度が低く、社内漏洩リスクが高くなるほど、重要性も高くなります。

公開情報

ホームページや四季報などに掲載されている情報

社外秘情報

社内での公開や共有のみ可能な情報

機密情報

特定の部署や関係者のみ取り扱える情報

JNSAによる分類

特定非営利法人日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)では、以下の分類方法が示されています。

情報

電子ファイル、紙 ほか

ソフトウェア

業務用ソフトウェア、事務用ソフトウェア、開発ソフトウェア、システムツール ほか

物理的資産

サーバー、ネットワーク機器、媒体、収容設備 ほか

サービス

クラウドサービス、通信サービス、電気・空調サービス ほか

JIS27000の定義による分類

情報セキュリティの3要素である「機密性」「完全性」「可用性」から、リスクに対する組織の影響度によって分類する方法です。

機密性

権限のない人がアクセスできないようにすること

完全性

データが欠落していない完全な状態であること

可用性

必要なときに使える状態を維持すること

( 2 ) 情報資産の管理が必要な理由

情報資産の管理が重要視されるようになったのは、デジタル化の加速が大きく影響しています。情報がデジタル化されることでデータ量が増加し、あらゆる場面で活用されるようになりました。一方で、サイバー攻撃の脅威は年々増加し、攻撃手段も複雑化・巧妙化しており、情報漏洩によるリスクも拡大しています。これらのリスクに備えるためにも、情報資産の適切な管理が必要です。

情報資産の漏洩リスク

情報資産が漏洩してしまったらどうなるのか、考えられる主なリスクは以下の通りです。

優位性の低下

情報資産は企業の優位性や競争力を支える「基盤」となるもの。顧客データや知的財産の流出は、それらを著しく損なう。

法的リスク

情報資産の流出は、損害賠償など法的なリスクがある。個人情報保護法などの法律は年々ルールが厳格化されている。

信頼性の失墜

情報漏洩などを起こした企業は、ブランドイメージや信頼性の低下を免れない。信頼を回復するには時間もコストもかかる。

生産性の低下

サイバー攻撃を受けると、業務がストップするなどの支障が出る。一部でも業務が滞れば、全体の生産性が低下してしまう。

情報資産が流出した事例

次に、実際に情報資産が流出した事例を2つ紹介します。外部だけでなく、内部にも脅威が潜んでいることがわかると思います。

サイバー攻撃でアプリから情報漏洩

2024年12月上旬、日用雑貨などを販売する会社で、商品購入の際にポイントを貯められるアプリがサイバー攻撃を受け、12万件以上の顧客情報(住所・氏名・電話番号・メールアドレスなど)が漏洩しました。2025年1月下旬の段階では不正利用は確認されていないが、同社では警察に相談するとともに、セキュリティ強化に力を入れるとしています。

元従業員による不正持ち出し

2024年8月、ある不動産会社が、元従業員が転職に際してデータ化された社内資料を不正に持ち出したと発表。マンション所有者の2万5000件以上の情報が、ダイレクトメールの送付に利用されました。同社では国など各所への報告・届出を行い、個人情報の取り扱いに関する従業員再教育や、社内システムへのアクセス権限の見直しなどを行っています。

( 3 ) 情報資産の漏洩が発生する原因

先の事例からもわかるように、情報資産が漏洩する原因は一つではありません。代表的な原因を7つ紹介します。

外部脅威

マルウェア感染や不正アクセスなどのサイバー攻撃は、手段が複雑化・巧妙化しており、情報資産漏洩の原因の多数を占める。

内部不正

従業員などが金銭目的や、転職先にデータを持ち出す手土産転職(※2)など、悪意や敵意を持って行われるケースが増えている。

メール誤送信

送信先の設定を間違える、重要なデータを誤って添付するなど、メールの誤送信による漏洩にも注意が必要。

ずさんな管理

設定ミスによりシステム上で重要な情報が閲覧できる状態になっていたなど、管理体制の不備によって情報が漏洩する場合がある。

セキュリティの脆弱性

ソフトウェアのアップデートなどが行われず、セキュリティの脆弱性が放置されている状態は、サイバー攻撃者に狙われるリスクが高い。

紛失・盗難

パソコンやUSBメモリなどを外部に持ち出し、紛失や盗難にあうケースは、リモートワークの普及によって増加傾向にある。

外部委託

アウトソーシングなど、外部への業務委託の多様化により、委託先から情報資産が漏洩するリスクも高まっている。

※1 サプライチェーン攻撃:ビジネス上のつながりを悪用して行われるサイバー攻撃。中小企業が「踏み台」にされることが多い。
※2 手土産転職:社内の情報資産を、転職先に「手土産」として提供する不正行為のこと。

( 4 ) 情報資産の管理方法

では、情報資産を適切に管理するにはどうすればよいのでしょうか。それぞれの情報の重要性に鑑み、リスクに備えた対策を講じることが重要です。

情報資産の管理方法
アクセス権限を
設ける

情報の重要度によって、特定の部署や関係者のみが閲覧・編集を行えるようにアクセス権限を設ける。

セキュリティツール
を導入する

外部攻撃だけでなく、内部不正やヒューマンエラーにも有効なセキュリティツールを導入する。

端末や媒体の
持ち出しを管理する

パソコンやタブレット、記録媒体などを社外に持ち出す際のルールを明確化し、紛失などのリスクを軽減する。

アクセスログを
監視する

情報資産の保存場所(サーバやオンラインストレージなど)のアクセスログ(※3)を定期的にチェックする。

データを暗号化する

重要な情報は暗号化して、万が一不正アクセスを受けた場合も解析できないようにしておく。

ソフトウェアを
最新の状態に保つ

ソフトウェアをアップデートし、脆弱性を改善する。自動更新されない場合は、定期的にアップデートを行う。

パスワード管理を
徹底する

パスワードは人目に触れないよう管理を徹底する。より強固な対策として多要素認証(※4)の導入なども検討する。

不審なメールに
注意する

「なりすましメール」など、不審なメールの添付ファイルは開封せず、URLも安易に開かない。

定期的にバックアップを行う

サイバー攻撃によりデータをロックされる、災害でデータが消失するなどのリスクに備え、定期的にバックアップを取っておく。

※3 アクセスログ:いつ、どこから、どのような操作やリクエストがあったかが記録されるため、システムの利用状況が把握できる。
※4 多要素認証:知識情報(パスワードなど)、所持情報(携帯電話など)、生体情報(指紋など)のうち、2つ以上を組み合わせて認証すること。

( 5 ) 情報資産管理で押さえるべきポイント

最後に、情報資産を管理する際に押さえておきたいポイントを解説します。具体的な施策とあわせて確認しましょう

情報資産の可視化

情報資産を適切に管理するため、自社にどのような情報資産があるのかをリストアップし、優先順位をつける。

データライフ
サイクルの管理

データの保存期間や廃棄の方法などを定め、データの利活用から廃棄までの「データライフサイクル」を管理する。

従業員教育の実施

従業員のセキュリティ意識を高める教育を定期的に実施し、情報漏洩リスクを軽減する。

内部監査の実施

社内の情報資産が守られているか内部監査を実施し、不備などがあれば改善策を講じる。

外部のリスク評価の活用

必要に応じて外部の専門家によるリスク評価も活用し、より精度の高い情報資産管理を構築する。

( 6 ) まとめ

今回は、情報資産および情報資産の管理について詳しく解説してきました。DXが加速する現代では、ますます情報資産の管理に対する重要性が高まっています。情報資産には個人情報や企業情報などの重要なデータが含まれているため、万が一外部に漏洩してしまうと甚大な被害が発生します。そのため情報資産の重要性を理解したうえで、厳重に管理することが必要です。

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