ChatGPTとは?
活用のポイントと気をつけておくべきこと

ChatGPTという言葉を、ニュースなどでよく聞くようになりました。何となく便利なものらしいということはわかるのですが、「具体的に説明できるのか?」と言われると、多くの方が言葉に詰まってしまうのではないでしょうか。今回は、ChatGPTについて解説するとともに、活用のポイントや留意点なども紹介していきます。便利な最新技術を安全に使いこなすために、ぜひ参考にしていただければと思います。

今回のお悩み
最近、連日のようにChatGPTのニュースが流れているけれど、どのようなものかを知りたい。便利だということは何となく理解できるのだが、利用に際してリスクや気をつけるべきことはあるのだろうか?

私が解説します!
最新のテクノロジーを賢く活用するためには、まずはどのようなものなのか、そのメリットや留意点などをしっかり理解しておくことが大切です。従業員のITリテラシー向上を図るためにも、ChatGPTについて知識を深めましょう。

( 1 ) ChatGPTとは?

AI環境が劇的に変化!?

ChatGPT(チャット・ジーピーティー)とは、テキストベースでユーザーが入力した質問に対して、高度な言語処理により、人間と変わらないような自然な回答をAI(人工知能)が行うというチャットサービスです。GPTは「Generative Pre-trained Transformer」の略で、「生成可能な事前学習済み変換器」という意味です。
このサービスを提供しているのは、アメリカで2015年に設立されたOpenAI(オープン・エーアイ)という企業です。OpenAIはAI分野の開発によって、世界のすべての人たちに有益なAGI(汎用人工知能)の普及・発展を目標としています。
OpenAIがChatGPTを公開した2022年11月以降、多くのメディアに取り上げられ、AIを取り巻く環境は劇的に変化したと言われています。

突出した精度のチャットボット

対話型のAIは、これまでにもさまざまなところで活用されてきました。企業において顧客からの問い合わせに対応するチャットボット(※1)や、「AIアシスタント」と呼ばれるiPhoneのsiri(シリ)などを思い浮かべる方も多いでしょう。
ChatGPTもチャットボットによる対話型AIですが、その精度と柔軟性が突出しており、それこそが世界中から注目を集めている理由と言えます。回答できる範囲やパターンが従来のチャットボットに比べて大幅に広がっているというわけです。

※1 チャットボット:chat(チャット)とbot(ボット)を組み合わせた言葉で、AIを活用した自動会話プログラムのこと。

( 2 ) ChatGPTの特徴

インターネット上のあらゆる情報を駆使

ChatGPTの特徴

ChatGPTは膨大なデータから学習することが特徴の一つとして挙げられます。インターネット上のあらゆる情報、例えばウェブサイト、ニュース記事、書籍、論文など、多岐にわたるテキストデータから学習し、多様なユーザーの質問やタスクに対応します。
世間をあっと驚かせた実験の事例があります。ペンシルバニア大学ウォートン校の教授が、ChatGPTにMBA(※2)の最終試験を解かせて採点したところ、合格点のB評価に相当したと報告しました。ChatGPTの大きなポテンシャルを知らしめたエピソードの一つと言えるでしょう。

※2 MBA:Master of Business Administrationの略。日本語では「経営学修士」と呼ばれる学位。

自然な回答が可能

通常のチャットボットは、設定されたプログラムの範囲内でしかユーザーに返答できません。ChatGPTは、膨大なデータから学習するとともに、多くのユーザーと対話を続けることで賢くなっていきます。例え曖昧な質問であっても、ユーザーの意図を汲み取りながら、人間の会話や文脈を模倣した自然な回答が可能です。
そのため小説や詩、メールマガジン、文章の要約・添削・校正、翻訳、プログラミングなどのテキストを高い精度で生成することもできる柔軟性を持っています。

誰でも利用できる

ChatGPTはオープンソースのサービスとして提供されており、企業や個人など誰でも利用できる「開かれた技術」です。
使い方もとてもシンプルで、公式サイトからログインして利用できます。現時点では英語のサイトしかありませんが、日本語で入力すれば日本語の回答が自動的に返ってきます。革新的なサービスでありながら利用は基本的に無料で、リリース後2カ月でユーザー数が1億人を超えました。2023年3月には性能がより向上した「GPT-4」がリリースされ、有料プランも登場。従来に比べて回答の精度が向上したため、多くの企業や個人がChatGPTを活用することで、サービスの開発やビジネスチャンスの創出を試みるなどの活況が生まれています。

参照:OpneAI_Introducing ChatGPT

( 3 ) ChatGPTのメリットと留意点

こうして見てくると、ChatGPTはよいことばかりに思えますが、まだ公開されてそれほど月日も経っておらず、「本当に使って大丈夫だろうか?」と不安に思う方もいることでしょう。
ここからは、ChatGPTを利用するメリットおよび留意点を考えてみましょう。

〈ChatGPTを利用するメリット〉

●業務の効率化に役立つ

ChatGPTを使うメリットとして、「調べもの」にかかる時間を短縮することができるなど、会社業務の効率化を挙げることができます。「 調べもの」に手間がかかってしまうのは、インターネット上に「知りたい情報」がまとまって存在していないためですが、ChatGPTは膨大な情報から検索意図を予測したうえで、「知りたい情報」にスピーディにたどり着くことが可能です。

●アイデア出しにも有効

働き方改革などのアイデア出しにも、ChatGPTは役立ちます。例えば「経費を削減するためのアイデアを教えて」などと質問すれば、「出張の頻度を減らす」や「紙の使用量の削減」といった具体的なアイデアを膨大なデータの中から提案してくれるのです。
また販売戦略・商品企画などにおいても、多くの人の時間と手間を必要とするブレスト(※3)に頼ることなく、ChatGTPと対話することで新たなひらめきが生まれるかもしれません。

※3 ブレスト:ブレインストーミング。複数人で自由に議論し、アイデアをどんどん出すことで新しい考え方や解決策を見出す手法。

●文章・プログラミング作成もお任せ

ユーザーの質問に応じてさまざまな文章作成が可能なため、ちょっとした文章ならChatGPTに任せてもよいでしょう。例えば社内用のマーケティング資料、メールマガジンやSNSに載せる短文の作成などをまとめるのは、ChatGPTの得意分野です。
またプロンプト(※4)から質問することで「Python(パイソン)」、「Java(ジャバ)」などのプログラミング言語によるプログラミングも可能です。

※4 プロンプト:コンピュータへの入力を促す表示。ここではChatGPTに送る文章、命令のこと。

〈利用時の留意点〉

●オフィシャルな利用には注意が必要

ChatGPTの回答はあくまでインターネット上の情報がベースであるため、情報の正確性は保証されていません。古い情報や、そもそも間違っている情報などをもとに回答している場合もあります。ChatGPTの生成した答えを鵜呑みにするのではなく、オフィシャルに利用する場合は事実確認などを行う必要があります。

●著作権侵害の可能性も

OpenAIの利用規約を日本語で要約すれば、「ユーザーが規約を遵守している限り、OpenAIは出力に対するすべての権利・利益をユーザーに譲渡する」という内容になりますが、注意しなければならないのは、ChatGPTが生成した文章自体に著作権侵害が含まれている場合です。知らないうちに著作権を侵害してしまう可能性もあるため、慎重を期す ならChatGPTで作った文章は利益目的での外部公開は避け、私的な利用にとどめるほうが無難です。

参照:OpenAI_Terms of use

●なくなる業務も出てくる!?

将来的にChatGPTを顧客の問い合わせ対応などに活用するという流れになれば、コールセンター、カスタマーサポートなどの業務の在り方が変わると予想されるため、対応が求められる部署も出てくるかもしれません。これらの業務を外部に委託している場合は、アウトソーシング系の企業にとって大きな影響があるでしょう。

( 4 ) これからのIT業界の動向

加熱するAI開発

ChatGPTのセンセーショナルな登場によって、IT業界ではにわかにAI開発が加速しています。2019年からOpenAIに投資を行ってきたマイクロソフトでは、OpenAIと連携することでさまざまなサービス・製品におけるAIとの融合を摸索しています。例えばサーバやネットワークなどの環境をクラウド上で提供する「Microsoft Azure(アジュール)」でも、AIインフラの構築が進んでいます。
また同社のブラウザ「Microsoft Edge(エッジ)」には、対話型のAI「Bing AI」が組み込まれ、チャットや文章作成が可能になりました。さらに2023年3月には、オフィスワークになくてはならない「Microsoft 365」にChatGPTベースのAIを組み込んだ「Microsoft 365 Copilot(コパイロット)」を発表。今後数カ月以内に価格と詳細について説明予定とアナウンスしています。

参照:Microsoft | Microsoft 365 Blog/Introducing Microsoft 365 Copilot

対抗する動きも活発化

片や、ChatGPTに対抗する勢力も出てきています。
顕著な動きを見せているのはグーグルで、2023年3月21日からアメリカとイギリスで対話型AIサービス「Google Bard(グーグル・バード)」の提供をスタート。日本国内からも4月18日よりアクセスが解禁されました。

参照:Google | Meet Bard

警鐘を鳴らす声も

一方で加熱するAIの進化に警鐘を鳴らす声も上がっています。OpenAIの共同創設者の一人でもあったイーロン・マスク氏(※5)は、AIの専門家たちと共同発表した公開書簡の中で、「行き過ぎたAI開発は危険」と述べています。

※5 イーロン・マスク:自動車ブランド「Tesla(テスラ)」や、航空宇宙メーカー「SpaceX(スペースエックス)」を率いる起業家。

早くもChatGPTの悪用が!?

ChatGPTはまだ新しいサービスなので注意も必要です。裏を返せば、セキュリティ対策が整っておらず、攻撃者に悪用されやすいという側面が否めません。例えばChatGPTを悪用してマルウェアフィッシングメールなどを作成する悪質な行為とそれに対応するOpneAI側の攻防もすでに始まっています。
企業にとっては「プロンプトインジェクション攻撃」という新たな脅威が出てきていることも懸念要因でしょう。ChatGPTを安易にシステムに組み込むと、ChatGPTを活用するウェブサービスに対する攻撃の可能性が高くなると専門家が指摘しています。これがプロンプトインジェクション攻撃と呼ばれるもので、攻撃を受けるとChatGPTを活用したサービスを提供している企業の情報が漏洩する恐れや、別のウェブサービスを攻撃する「踏み台」にされるリスクも生じると言われています。

( 5 ) 中小企業がとるべき対策

DXに対する投資をしっかりと

ChatGPTを活用することが自社においてどんな意味を持つか、今一度考えてみる必要があるでしょう。目まぐるしく変化するビジネスシーンで成長を続けるにはどうすればいいか、その際ChatGPTがもたらしてくれる恩恵はどのようなものかをイメージしてみてください。
もちろん最新技術をいち早く取り入れてこそ、企業としての優位性も獲得できます。そのためには、社内に情報セキュリティ対策がベースとして整っていることが大前提であり、DXに対する投資と言ってもいいでしょう。

従業員のITリテラシーを高める

ChatGPTがどれだけ賢くても、結局それを使うのは人間です。安易に「便利そうだ」と飛びつくのではなく、従業員のITリテラシー向上も同時に取り組むことが大切です。そのためには定期的な研修なども必要になってきます。
新技術に過度な期待を抱いたり、逆に不安だからと手を出さなかったりするのではなく、正しく理解したうえで適切に活用できる人材を育てることが重要です。AIに踊らされるのではなく、AIを使いこなすという姿勢が求められます。

自社のセキュリティ対策の現状を把握する

技術は日進月歩で進化しています。新たなサービスが生まれ、私たちを取り巻くIT環境の劇的な変化に伴い、企業を狙うサイバー攻撃もどんどん多様化・巧妙化しています。
経営者としては、自社の状況を把握しておくことが重要です。自社のセキュリティ対策の取り組み状況や、今後対策を立てるべき問題点などを把握できるサービスもあります。情報漏洩やデータ消失など、取り返しのつかないセキュリティインシデントを起こさないためにも、まずは自社の現状把握から始めてはいかがでしょうか。

( 6 ) まとめ

ここまで、今話題のChatGPTについて、概要とともにメリットや留意点などを紹介してきました。多くの方が興味はあるけれど、「実際のところよくわからない」という状態だと思います。ChatGPTは、まだ登場したばかりの先進的なテクノロジーであり、そのような最新技術を安全に活用するためには、自社の情報セキュリティ対策を把握したうえで、従業員のITリテラシー向上を図ることが欠かせません。
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