UTMとは?
主な機能や導入メリット・選び方をわかりやすく解説

サイバー攻撃の増加や複雑化により、企業はセキュリティリスクの課題に直面しています。また、セキュリティ対策に関する法的規制が厳格化し、企業におけるセキュリティ対策は急務となっています。しかし、中小企業はセキュリティ対策に多くのコストや人手を割けないのが現状です。そこで今回は、複数のセキュリティ機能を一つに統合した「UTM(統合脅威管理)」について、機能や導入メリット、選び方などをわかりやすく解説していきます。

今回のお悩み
会社のセキュリティ対策を強化したいが、コストはできる限り抑えたい。最近よく耳にするUTMが自社にとって必要なのか、具体的な機能や導入した場合の効果について知りたい。

私が解説します!
日々進化するサイバー攻撃から会社を守るために、UTMの導入を検討する企業が増えています。しかし、自社にとって本当に必要かどうか悩んでいる企業も多いでしょう。UTMの主な機能や特徴、メリット・デメリットなどを理解し、導入の検討に役立ててください。

( 1 ) UTM(統合脅威管理)とは?

サイバー攻撃の被害が年々増加し、企業のセキュリティ対策は不可欠となっています。これに伴いさまざまなセキュリティ対策ツールが登場していますが、中でも効果的なツールとして注目されているのが「UTM(統合脅威管理)」です。

UTMはUnified Threat Managementの略で、1台に複数のセキュリティ機能を備えた統合的なシステムです。従来、ファイアウォールやアンチウイルスなどのセキュリティ対策は、機能ごとに個別のソフトや機器を導入する必要がありました。UTMにはこれら複数の機能が搭載されており、一元管理ができるため手間や運用コストを軽減しながらセキュリティを強化できます。

UTMの主なセキュリティ機能

UTMには、主に6つのセキュリティ機能が備わっています。それぞれの機能は以下の通りです。

機能 説明
ファイアウォール インターネットを経由して侵入する不正なアクセスや悪意のある攻撃を防御するシステム。主に外部からのパケット(データ)を監視し、内部ネットワークへの接続可否を判断する。
アンチスパム 大量に送信されるスパムメールやフィッシングメールを判断しブロックする機能。送信元のサーバーやメールアドレスを「ブラックリスト」に登録し、スパムメールに振り分ける。
アンチウイルス ウイルスやマルウェアを検知し、コンピュータやデバイスへの感染を防ぐために削除、または隔離する。
Webフィルタリング 内部ネットワークから特定のWebサイトへのアクセスを制限する。危険な通信をブロックし、有害なサイトや業務に不適切なサイトへのアクセスを制限する。
IDS/IPS 外部からの通信を監視し、不正な通信や重要な情報の漏洩などを検知する。IDSは侵入の検知のみを行い、IPSは検知後にブロックなどの防御を行う。
アプリケーション制御 業務に使用するアプリケーションを把握・判別し、それ以外の通信を制限・遮断する機能で、マルウェアによる不正アクセス情報漏洩によるリスクを低減する

( 2 ) UTMの導入メリット・デメリット

UTM導入のメリット

UTMの導入はセキュリティ強化だけでなく、さまざまなメリットがあります。

  • 導入や管理コストの軽減
  • 業務に⽀障なく導⼊が可能
  • トラブル時の対応が容易

一番のメリットとして挙げられるのは、コスト面です。一台で複数のセキュリティ機能を一元管理できるため、コストを抑えることができます。また、ゲートウェイ(※)に機器を設置するだけで、工事や既存のネットワークの大幅な変更も必要ありません。
機器の故障やネットワークに問題が発⽣した場合、UTMの機器⾃体を交換することで対処でき、保守サポートや問い合わせ先は購⼊した1社で済むため、迅速なサポートを受けられ、短時間での復旧が可能です。

ゲートウェイ:日本語では「玄関」「入り口」の意。通信手段の異なるネットワークを中継する機能を持つ。

UTMのデメリット・注意点

UTMを導入は多くのメリットがある一方で、いくつかデメリットもあります。UTMの導入を考えている場合、以下の点を考慮したうえで検討しましょう。

  • 故障やダウン時の影響が⼤きい
  • セキュリティ機能の選択範囲が制限される
  • トラフィック負荷による通信速度の低下

UTMは多くのセキュリティ対策を一台で担うため、故障や障害が発生した場合はセキュリティレベルの低下や、インターネットへの接続が制限されるリスクがあります。導入したデバイスに搭載されたセキュリティ機能の範囲内でしか利⽤できず、カスタマイズは困難です。また、機能が充実しているUTMはネットワークへの負荷が増加し、通信速度が低下する場合があります。

また、UTM導入には以下の点にも注意が必要です。

  • 製品によって得意分野が異なる
  • UTMは万能なわけではない

UTMは製品によって機能や特性が異なります。必要なセキュリティ機能を明確にし、各製品の機能や特性を⽐較検討することが重要です。複数の機能を搭載しているとはいえ、UTMの主な役割は「ネットワークの監視」です。「UTMの導入=対策は万全」ではないことに留意し、必要な対策を検討しましょう。

( 3 ) UTMを導入すべき企業とは?

セキュリティ対策に有効なUTMですが、どのような企業が導入を検討すべきなのでしょうか。ここではUTMの導入をおすすめする企業と、その理由について紹介します。

UTMを導入すべき企業とは?

●セキュリティ担当者がいない企業

情報システム部⾨やエンジニアなど専任の担当者がいない企業は、設置や運用が容易でアップデートなどの更新の手間がないUTMの導⼊が有効です。導入後のサポートが受けられる製品であれば、担当者が不在でも安心です。

●小規模から中規模の企業

近年のサイバー攻撃は中⼩企業を標的にするケースが増加し、中⼩企業を「踏み台」として利⽤するサプライチェーン攻撃は「情報セキュリティ10⼤脅威2023」でも上位にランクインしています。セキュリティ対策に大きなコストをかけることができない中小企業は、複数のセキュリティ機能が一つに集約され、導入・運用コストが抑えられるUTMの必要性が高いと言えるでしょう。

参照:IPA(独⽴⾏政法⼈ 情報処理推進機構)「情報セキュリティ10⼤脅威 2023」

●すぐにセキュリティを強化したい企業

UTMはセキュリティ強化が急務とされる企業にもおすすめです。導入する際に⼯事やネットワークの変更は不要で、さまざまなセキュリティ機能を備えているため、1台で複数のツールの役割を担うことができます。

●顧客情報を多く取り扱う企業

2022年4月に改正個人情報保護法が施行され、個人情報が漏洩した場合の報告の義務化や、違反時の罰則が強化されました。顧客情報などの個人情報を管理する企業には、社内外のさまざまな脅威から自社の資産となる情報を守るUTMのような、強固で包括的なセキュリティ対策が求められています。

( 4 ) 失敗しないUTMの選び方

実際にUTMの導入を検討する際に、押さえておきたいポイントを紹介します。

●⾃社に必要な機能を備えているか

UTM製品の多くは、導入後の機能追加や拡張が難しい場合があります。UTMを導⼊する際は、まず⾃社のセキュリティ要件を明確にし、どのような機能が必要か、自社に合ったコストであるかなどを洗い出すことが大切です。将来も見据えたうえで、製品スペックが自社の規模に適しているかを検討しましょう。

●充実したサポートが受けられるか

UTM導入後、トラブル発生時だけでなく、不明点などを相談できるサポート体制が整備されているかを確認しておきましょう。特に社内にセキュリティの専門部署や担当者を置かない場合、サポートが充実している製品を選んでおくと安心です。

●わかりやすく使いやすい製品か

機能や操作性のわかりやすさもUTMを選ぶうえで重要なポイントです。表示に専門的な用語が使われているような製品は設定や運用に手間取り、業務効率の低下にもつながります。また、海外メーカーの製品は⽇本語に対応していない場合もあるため、機能を⼗分に活⽤できない可能性も考えられます。

●耐久性がありメンテナンスしやすいか

UTMは複数のセキュリティ対策を一元管理するため、障害や不具合が発生するとすべてのセキュリティが脆弱になる可能性があるため、耐久性が高くトラブルに強い製品選びが重要です。メンテナンス対応のオプションやサービスが充実している製品を選ぶことで、業務の効率化にもつながります。

おすすめのUTMとは?

UTMは製品ごとに機能や特性の違いがあります。自社に最適なUTMを選ぶためには、性能や機能だけでなく、使いやすさやメンテナンスのしやすさ、導入後のサポート体制も考慮する必要があります。先に挙げたポイントをふまえ、検討を行いましょう。

例えば、サクサの最新モデルのUTM「SS7000Ⅱ」は、以下のような特徴を備えています。

  • さまざまなセキュリティ機能を搭載
  • 内部からの情報漏洩リスクにも対応
  • 高いセキュリティと高速データ通信を両立
  • 導入後のアフターケアも充実
  • サイバー保険が標準で付帯していて安心

充実したセキュリティ機能に加え、監視・保守・サポートなど導入後のアフターケアも万全です。この「SS7000Ⅱ」一台で多様化・巧妙化するサイバー攻撃の対策が行えます。

( 5 ) UTMでよくあるQ&A

UTMについて、よくある質問にお答えします。

Q1. クラウド型UTMとは?

クラウド型UTMは、UTMの機能をクラウド上で提供するサービスです。機器を設置する必要がなく、初期設定や運用・保守は業者が行います。手間とコストが軽減されるといったメリットがある一方、トラブル時にはすべての拠点に影響が及ぶ可能性などのデメリットもあります。

Q2. UTMとファイアウォール・WAFの違いは?

保護対象と防御範囲が異なります。UTMファイアウォールはルータの直下に設置し、不正アクセスから内部ネットワークを防ぐ点は共通していますが、複数のセキュリティ機能を持つUTMファイアウォールより防御範囲が広く、内部からの不正通信も防ぎます。WAFはWebサーバーの前面に設置し、Webアプリケーションの脆弱性などを狙った攻撃を防御します。UTMはインストールや細かな設定が不要であることも大きな違いです。

Q3 .UTMの導入は義務化された?

UTMに導入義務はありません。しかし改正個人情報保護法で、個人情報漏洩によって個人の権利利益を害する危険性が生じた場合の報告・通知が義務化され、違反時には最高1億円の罰金など罰則規定も厳格化しました。これに伴い、企業の情報セキュリティ強化が求められ、UTMを導入する企業が増えています。

Q4 .UTMでランサムウェア対策は可能?

UTMはさまざまなセキュリティ機能を兼ね備えた統合的なシステムです。インターネットに関連するあらゆる脅威を一括で対策することができ、近年被害が拡大しているランサムウェアの対策としても有効です。ただし、未知のランサムウェアが登場した場合など、従来のUTMでは防御できない可能性もあります。

Q5 .UTMは必要ないって本当?

UTMの主な役割はネットワークの監視です。そのため、UTMだけでは万全な対策が行えないとして、一部では「必要ないのでは?」という意見もあります。しかし、セキュリティ対策の基本は外部からの不正アクセスを防ぎ、マルウェア感染や情報漏洩を防止することにあります。多様化するサイバー攻撃の対処には、多層防御のUTMの導入は有効と言えるでしょう。

( 6 ) まとめ

今回は、複数のセキュリティ機能を一元化して効率的に運用できるUTMについて解説しました。導入・管理コストを抑えてセキュリティ強化したい企業にとって、日々多様化するサイバー攻撃から自社を守ってくれるUTMは優れたセキュリティツールと言えます。セキュリティ対策に課題を抱えている、もしくはセキュリティ担当者が不在の企業は、この機会にUTMの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

サクサではUTMの基礎知識を解説する特設ページをオープンしています。UTMの機能や脅威となるサイバー攻撃について、動画で詳しくご紹介しています。また、記事の中でも紹介した最新モデルのUTM「SS7000Ⅱ」の詳細もご覧いただけます。ぜひ自社のセキュリティ対策の参考にしてください。

UTMの基本機能から導入メリット・選定ポイントなどを、詳しく解説したお役立ち資料もご提供していますので、ぜひご活用ください。

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