5Gがもたらすデジタル変革への影響と
新たなセキュリティリスクの対策

5Gという言葉はご存じでしょうか?みなさんお聞きになったことはあると思いますが、5Gの普及によって企業活動がどう変わるのか、詳しくはわからないという人が多いのではないでしょうか。今回は、5Gがもたらすデジタル変革とは何か、それに伴ってどのようなセキュリティ対策が必要になってくるのか、具体的に紹介していきます。新しい時代に合わせて経営者が取り組むべきテーマが見えてくるでしょう。

( 1 ) 高速・大容量、低遅延などの特徴を持つ5Gとは

5Gが早くも注目を浴びた2019年、コンサルティング会社「アクセンチュア」(アイルランド・ダブリン本社)が実施した調査では、日本の経営層の約70%が5Gのもたらすインパクトについて十分に理解していないことが判明しました。

一方で、日本はもちろん世界の経営層のほとんどが、5G関連技術が「今後、競争上の重要な意味を持つようになる」と認識していることも明らかになりました。つまり「よくわからないけれどすごそう」と、多くの経営者が漠然と期待を寄せているわけです。

高速・大容量、低遅延などの特徴を持つ5Gとは

5Gは「第5世代移動通信システム」

では、5Gとは何でしょうか。これは「5th Generation」の略で、日本語だと「第5世代移動通信システム」を表します。1980~90年代の1G(第1世代)から数えて5世代目のモバイル通信方式という意味で、わが国では2020年春からサービスの提供がスタートしました。

( 2 ) 5Gがもたらす3つの大きなメリット

5Gのひとつ前の4Gの時代から、スマートフォンやタブレットで動画を楽しむのが当たり前になりました。一方で動画にはトラフィック(※1)の増加という問題があります。これが、5Gを活用することで解決できると期待されています。
また5G時代には、IoT(※2)によって自動車、家電、医療機器など、ありとあらゆるモノがつながるようになると予想されています。これらを可能にするのが、5Gの持つ以下のような特徴です。

  • 高速かつ大容量の通信ができる
  • 通信の遅延が起こりにくい
  • 同時に多数の接続が可能

5Gは4Gに比べて通信速度は約100倍に、さらに通信容量はなんと約1000倍になるといわれています。今までは何十秒もかかっていたような動画のダウンロードも、あっという間にできてしまいます。また、多くのモノがネットワークにつながっていても、混雑することなくサクサクとスムーズに利用できます。つまり、同時に多くの接続が可能であるメリットは、あらゆるモノ同士がつながるIoTの普及を大いに促すでしょう。
さらに低遅延のため、リアルタイム通信が可能になります。例えば医療分野における遠隔操作や、車の自動運転などではリアルタイム性が求められるため、5Gの活用が期待されています。

人手不足の解消にも

自動運転技術や遠隔操作がさらに発展すれば、物流、建設、小売、農業など、さまざまな分野において「無人化」が加速する可能性があります。人間が行っていた業務をロボットが担えるようになれば、人手不足の解消にもつながります。常に人材確保に悩んでいる中小企業にとっては、まさに朗報です。

※1 もともとは「交通量」などを意味し、IT用語としては、ネットワーク上を移動する情報量・通信量などを意味する。
※2 「Internet of Things」の略。さまざまなモノがインターネットに接続され、情報交換や制御が行えるようになること。

( 3 ) 5G通信がもたらす「これから」の暮らし

新たなビジネスの創出やDX(※3)やデジタル化に取り組む企業にとって、5Gは重要なキーワードです。では5Gが普及すると何がどう変わるのか、具体的な事例として、いくつかを紹介します。

自動運転技術

メリットのところでも触れた自動運転技術は、5Gの活用なくしては実現しない技術です。自動車に搭載されたセンサが情報を集めて分析し、それをフィードバックすることによって制御が行われるため、大量のデータを遅延なく処理する必要があります。安全性確保などの面から完全な自動運転が実現するのはまだ先の話になりそうですが、多くの自動車関連企業が5Gの機能をフル活用して、開発に力を入れていることは間違いありません。

遠隔医療

高齢化が進む日本では、医療機関の偏在が問題化しており、地方の診療所と都市部の大きな病院が5G通信によって連携できれば、この問題解決に大きく役立つといわれています。
インターネットを介した遠隔診療はすでに行われていますが、画像が不鮮明だったり、通信が遅れたり、さまざまな問題を抱えています。しかし5Gを活用することにより、4Kカメラで撮影した高精細な映像をリアルタイムに送ることも可能になります。

エンターテインメント&サービス

コンサートやスポーツ中継のマルチビューなど、エンターテインメントはさらに臨場感のあるものへと進化します。またはVR(仮想現実)やAR(拡張現実)、AI(人工知能)などの技術と組み合わせることで、これまでの常識にとらわれない新たなサービスやコンテンツが生まれる可能性もあります。
またIoTによってライフスタイルのスマート化が進めば、消費者の生活の変化に合わせた商品やサービスが求められるようになります。ここにも大きなビジネスチャンスが潜んでいます。

テレワーク

多くの会社が取り入れている在宅勤務などのテレワークは、5Gの登場によってさらに普及するでしょう。バーチャルなミーティングでは「なかなか思うようにやりとりできない」と感じていた問題も、高速かつ低遅延の5Gなら解消できるかもしれません。これまでテレワークの導入をためらっていた企業には、ハードルが下がることになります。

※3 「Digital Transformation」の略。デジタル技術によるビジネスや生活の変革を指す。

5G通信がもたらす「これから」の暮らし

( 4 ) 利便性と隣り合わせのセキュリティリスク

IoT時代が本格的に到来すれば、あらゆる機器がスマートフォンのアプリなどによって操作できるようになります。また、テクノロジーの進化は常に新たなビジネスチャンスをもたらします。顧客ニーズを即座にキャッチし、製品開発やサービスの提供に反映できるようにもなるでしょう。あるいは工場の稼働状況をリアルタイムで分析することも、サプライチェーンの流れをより合理的に最適化することも、可能になるはずです。

このように利便性が向上する一方で、5Gにもデメリットがないわけではありません。その最たるものが、セキュリティリスクが高まってしまうことです。

新たなセキュリティリスクの発生

ネットワークのモバイル化が進み、さらにIoTによってネットワークに接続する機器が多様化すれば、これまでのシステムでは対応しきれない、新たなセキュリティリスクが発生することが予測されます。具体的には、

  • サイバー攻撃の標的が増える
  • トラフィックの増加により盗まれる情報も増える
  • IoT機器のセキュリティが不十分な場合がある

といったことが考えられます。

今までインターネットとはつながらなかったモノがインターネットとつながるようになることで、サイバー攻撃の対象が増えるのは当然のことです。また、ネットワーク上を行き来する通信量が増えれば、それだけ窃取される個人情報や機密情報も増えてしまう可能性があります。
さらに、インターネットに接続でき、リモート操作を可能にするIoT機器は、パソコンなどと比較してメモリ容量やCPU(中央演算処理装置)の処理性能が小さいため、簡単なプログラムしか実行できません。そのため、十分なセキュリティ対策が施されていない場合が多いのです。

世界を震撼させたサイバー攻撃

2016年、IoT機器の脆弱性が露呈した世界的な出来事が起きました。ボットネット(※4)を使った大規模なDDoS攻撃(※5)が、アメリカの企業に対して行われたのです。これには、マルウェア(悪意あるプログラム)である「Mirai(ミライ)」と呼ばれるウイルスに感染したIoT機器が、足がかりとして悪用されました。

IoT機器の設定や管理を行うWebページにアクセスするには、ログインIDとパスワードが必要です。しかしそれは初期設定のままであることが多く、Miraiはその脆弱性をついてきたのです。この攻撃によって、多くのサイトが長時間にわたって断続的にアクセスできない状態になりました。
ちなみにMiraiには亜種が確認されていて、現在も感染を広げています。

※4 乗っ取られたコンピュータで構成されるネットワーク。
※5 「Distributed Denial of Service attack」の略。過剰なアクセスやデータ送付によってサーバをパンクさせる「DoS攻撃」を、乗っ取った複数のコンピュータから行うこと。分散型サービス拒否攻撃ともいう。

( 5 ) 意識の高いセキュリティリテラシーが必要

2018年9月、アメリカのカリフォルニア州において、IoT機器のセキュリティ強化を目的として、「IoTセキュリティ法」が成立しました。このように世界では、インターネットに関する法律の整備が進んでいます。
とりわけ情報のやりとりが高度化する5G時代では、ユーザーがセキュリティリスクの存在を理解し、意識の高いセキュリティリテラシーを持って利用することが欠かせません。具体的には、以下のようなことに気をつけておくことが、対応策として挙げられるでしょう。

高度なセキュリティ対策の機能を有するIoT機器を選ぶ

実際のところIoT機器のセキュリティ品質はまちまちです。安易に「低価格」という理由で、よく理解しないまま機器を購入すると、セキュリティの脆弱性を狙われてしまう可能性があります。どのような暗号方式を使っているか、信頼できるメーカーの製品なのか、といった観点もIoT機器の選択には重要です。

ファームウェアのバージョンアップを

インターネットに常時接続しておくことが当たり前になると、ファームウェア(※6)のアップデート(バージョンアップ)を忘れないことが大切です。もしアップデートしないまま放置しておくと、脆弱性を狙われることになります。更新の方法に自信のない場合は、自動的にアップデートしてくれる機器を選んでおくと安心です。

セキュリティシステムを進化させよう

IoT機器だけでなく、通信に使われるネットワークや、データ収集・サービス提供などを管理するプラットフォームにも、セキュリティ対策を施す必要があります。ひと言でいえば、「会社のセキュリティシステムを進化させる」ことが重要です。そうして外部からの攻撃はもちろん、社内から外に情報が漏れてしまうリスクにも備えておきましょう。

ビジネスパートナーへの影響にも留意

近年は流通網を利用して中小企業を足がかりに侵入し、本命の企業にサイバー攻撃を行うサプライチェーン攻撃のように、サイバー攻撃にもさまざま手口が出てきており、取引先やビジネスパートナーへの影響も考えておく必要があり、「きっと大丈夫だろう」という油断は禁物です。デジタル化が進むほど、その企業が取り組んでいるリスクマネジメントの真価が問われることになります。

※6 インターネットやパソコンの周辺機器に内蔵されている、制御用のソフトウェア。

( 6 ) 安心して高速通信を利用するためのマストアイテム

新時代の到来によって、さらに高いセキュリティリテラシーが必要だ、ということは十分にご理解いただけたと思います。しかし、具体的に何をどうすれば適切なリスク対策ができるのかよくわからない、というのが多くの経営者の偽らざる本音ではないでしょうか。それを端的にまとめると、以下の3つに要約できると思われます。

  • 高速通信を戦略的に利用したい
  • 内部・外部のさまざまな脅威に備えたい
  • 必要に応じて専門的なサポートを受けたい

つまり、これらをクリアすることが、企業にとって今後模索するべき道になってくるでしょう。

UTMという賢い選択

そこで注目したいのが、複数のセキュリティ機能を一元化したUTM(統合脅威管理)というアプライアンス製品です。UTMにはファイアウォール、アンチウイルス、Webフィルタリングなどが集約されており、これをゲートウェイ(ネットワークの出入り口)に設置することで外部からの攻撃や侵入を防ぐだけでなく、危険なWebサイトへのアクセス禁止や、メールの誤送信防止、添付ファイルの自動暗号化などにより、内部からの情報漏えいも防ぐことができます。何よりも、さまざまなリスクに個別に対応する必要がないため、手間もコストも抑えられることが魅力です。

UTMとひと口にいっても、多種多様なものがあります。サイバー攻撃対策やメールに関するセキュリティ対策と合わせて、以下のような機能やサポートがあるかどうかは、事前に確認しておきたいところです。

  • 監視、保守など、導入後のアフターケアが充実しているか
  • テレワークでも高いセキュリティ環境をかなえてくれるか
  • 快適な速度と安全性で、生産性を落とすことなく使えるか

つまりは、UTM選びのポイントは、以上3点を実現し、最適なツールを提案してくれるパートナーを選ぶことともいえます。

安心して高速通信を利用するためのマストアイテム

セキュリティ担当者が不在の企業に最適

また、UTMは専任のセキュリティ担当者を置いていない企業にこそおすすめです。人材を配置することが難しい場合や、担当者の専門知識が不足しているという企業もあるでしょう。しかしUTMを導入することで、さまざまなリスクに対してしっかりと対応することができます。ウイルスのデータパターンを自動更新し、最新の安全なネットワーク環境を実現してくれるなど、実に頼もしい存在といえます。

会社の信頼を守るために

セキュリティ対策は自力だけで解決することは困難なため、専門知識を持った人の力を借りる必要があり、会社の信用を落とさないための重要な点でもあります。情報漏洩などにより会社の信用が低下してしまえば、その後のビジネスへの影響は計り知れません。それらを防ぐためにも、セキュリティ対策は会社として力を入れて取り組むべきテーマなのです。

( 7 ) まとめ

ここまで、5Gがもたらすビジネスへの影響と、新たなセキュリティリスクの対策について解説してきました。5Gへの期待ばかりが先行して、リスクには目が向いていなかったという方も多いのではないかと思います。それでは万が一のことがあった場合、深刻な事態に陥りかねません。メリット・デメリットを正しく理解してこそ「デジタル技術による変革(DX)」を起こすことができるようになります。

サクサでは、UTMをはじめとする最新のツールで、中堅・中小企業のセキュリティ対策をサポートさせていただきます。企業の信用を守り、機会の損失を防ぐビジネスパートナーとして、ビジネスに関するあらゆるご相談を承ります。サポート体制も万全なので、知識に不安がある方でも安心です。ホームページに載せている詳しい製品情報も、ぜひご参照ください。

経営課題におけるトレンド情報や課題解決にお役立ていただける資料をまとめております。
ぜひ一度お読みください。

お役立ち資料一覧はこちら